ジェンダーワイズ

Gender-wise 世の中のニュースやトピックをジェンダー視点から読み解く

絶歌についての反応

 神戸市で児童連続殺傷事件をおこした元少年Aの手記「絶歌」が発売となり、報道番組でもウェブでも反響があとを絶たない。おおむね、「出版差し止めすべき」「私は買わない、読まない」などの意見が主流のようである。

 私が気になるのは、学者や評論家等の有識者があまり本件について発言してないことだ。Twitterやブログ等チェックしてみたのだが。なにかアンタッチャブルのような扱いな気がする。書店側も「販売しない宣言」をしているところも次々に現れ、モラルを示している昨今。そういえば、私の近所の書店でも置いてはいなかったようだ。単に田舎のせいなのか、売れすぎて欠品なのかはわからない。
 識者といっても、タレントなどがテレビで発言しているのはみたし、フリーアナの長谷川豊が肯定的な意見をブログ記事にしたというのは知ってるが、長谷川豊はしょせんはタレントであって、ジャーナリズムからはほど遠い。
 つまり、ここには「表現の自由」という我々が保証されている権利というものが前提にあって、この冠を外して語ることは、有識者という立場においては難しい。かといって、殺人事件であり、遺族の感情という大きな社会的な壁がある。この二つを両立させるには、並の頭脳では難しく、炎上リスクの覚悟が必要というものだ。

 読んでいないものはコメントできない、と言ってた大学教授のtweetも目にした。正直関わりたくないというところか。
 一方で、アマゾンでのブックレビューにも関わらず、読んでもいない人達が大群で非難している異常な現象もおこっている。事件について語るBBSならまだしも、あくまでここはブックレビューであるのに。
 名の知れている人と匿名な人との差は実に大きいのがいびつ。そういう私も匿名だが、ひとまずここは冷静であらねば。

 そんな中で弁護士の紀藤正樹が氏のブログで「もう匿名は許されないのではないか?」と記事を書いている中で、

 

仮に本の内容が虚偽で死者の名誉を傷つける部分があれば、刑法230条2項「死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。 」と言う規定上、共犯に問われる可能性すらあります。
もちろん本の内容に、ご遺族の名誉をき損する行為が、あれば「通常の名誉棄損」のルールに基づいて、民事上も刑事上も、処断されることになると思います。

と、十分に名誉棄損として訴えられる可能性があるどころか、刑事罰として処遇される可能性があることを示唆している。

 出版差し止め、回収を求める抗議もされているため、このままだと民事訴訟までに発展する可能性は高いのではないか。もう30過ぎたオッサンである元少年Aは、14歳の少年ではない。いつまでも少年Aのまま匿名でいられるのかどうか。やはり著作側にも 大きなリスクと責任が問われるということだ。

 (ジェンダーとは無関係記事でした)