ジェンダーワイズ

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枕営業は不倫ではなくビジネス、の仰天判決

 朝からびっくりしてしまった、このニュース。

 銀座のクラブママがお客である既婚男性と7年も性関係を持ち、男性の妻から精神的苦痛で慰謝料400万円を請求したが、東京地裁で棄却された。「何ら結婚生活の平和を害するものでなく、妻が不快に感じても不法行為にはならない」とのこと。

 判決によると、男性と女性は2005~12年、月に1、2回のペースで主に土曜日に、昼食をとった後、ホテルに行って夕方に別れることを繰り返した。この間、男性は同じ頻度で店に通っていたため、始関裁判官は「典型的な枕営業」と認定し、妻の請求を退けた。

 驚くことに、弁護側から「枕営業」という主張がされたわけでは全くない。裁判で妻側は「不倫だ」と訴え、女性側は性交渉の事実を否定、「双方とも主張していない枕営業の論点を裁判官が一方的に持ち出して判決を書いた。訴訟も当事者の意見を聞かず、わずか2回で打ち切られた。
 この裁判官は、始関正光。法曹界のエリートだそうだ。判決によると、

「売春婦が対価を得て妻のある客と性交渉しても、客の求めに商売として応じたに過ぎないと指摘。『何ら結婚生活の平和を害するものでなく、妻が不快に感じても不法行為にはならない』とした」

枕営業をする者が少なからずいることは公知の事実」「客が店に通って代金を支払う中から、間接的に枕営業の対価が支払われている」「(枕営業と売春は)対価の支払いが、直接か間接かの違いに過ぎない」

 結婚生活を破たんさせるものではないかもしれないが、少なくともこの妻にとっては、”平和を害されている”から、慰謝料請求したのであるが。


 この裁判官について、アヴァンセリーガルグループの山岸純弁護士に聞くと、

裁判官には、判決を書くだけでなく、民事訴訟法の改正を手伝うといった仕事もあります。始関裁判官はその担当を10年ほどやっていた方なんですよ。優秀だからこそ、このような判決理由を導き出せたのだと思います。もしかしたら妻の請求権を認めたくなかったために、このような理由を捻り出したのかもしれませんね。

 なるほど、確かに、裁判官の考えが色濃く出ているし、裁判官自身、枕営業やってもらってんじゃね?と邪推してしまう。

  女性を”素人と玄人”に区別する、と上野千鶴子氏も問題点を下記の通り指摘。

 そもそも上野氏は、配偶者の性生活を管理する権利があるとする結婚契約そのものに否定的ではあるものの、人権問題としてはこれは見逃せないという視点である。

  それにしても、性行為とクラブ活動に有り余るほどの対価を払える金持ちに都合のいい判決じゃああるまいか。貧乏人がセックスに対価を直接的に払わないと、不倫認定、なんじゃこれ?とならないか。お金で買っているか否かが基準となり、上野氏の言うように、女を素人と玄人に区別する(今後は男性=ホストもあるかも)
 極論では、性風俗に勤めていない人であっても、業種問わず、営業目的のための性行為が許容されていくことになりはしないか、いや、許容されなくても、賠償金は請求できなかったりして?!
 今後も不倫に対して「枕営業」と言う言葉が、ていのいい言い訳に使われていくではないかと色々危惧されている。現在、訴えられてる人、訴えている人、胸中は?
 しかし現実的には、社会通念上、認められがたいということだ。今朝のワイドショーで、ヒロミが、どうも判決には腑にに落ちないとし、ばれないように昼間っからやってたけどばれたからダサイよね、と、今夜の飲み屋でのネタになるとしめた。なるほど、ああそうか、決して、地位と名誉のある男性にとってもウェルカムなものとして受け入れられないのだなと思った。奥さんからは締め上げられて、社会的にも仕事を失う可能性もある。

 私としては「この2人の間に愛はあったのか、なかったのか」と、不毛な議論がいまのところ成されず、よかったと私は思う。愛があれば、じゃあ不倫認定、枕営業じゃないよ、と言う風には機械的には決められないから。多分、恋愛感情は少なからず、あったと思う。が、何より、この2人はセックスを愉しんでいたのは間違いない。感情は排除して、性行為と女性の職業いう事実のみに対してなされた判決ということだ。

 なんともいいいがたいニュースだが、今日のところは、ここまで