ジェンダーワイズ

Gender-wise 世の中のニュースやトピックをジェンダー視点から読み解く

保田圭のしくじり先生ハマリ具合

 今日放送された「しくじり先生 俺みたいになるな!!」2時間スペシャル(5月25日19時~)、元・モーニング娘。保田圭の教壇には、多くの女性に衝撃と感動を与えたようだ。最後エンディングで、うるうる泣いている女性陣に対し、オードリー若林が、”これってまるで映画の「学校」みたい”発言をして爆笑を呼んだが、確かにそれくらいの先生と生徒の一体感を得たような空気だったように思う。

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 genderwiseな私としては、素直にいい話だ、と思う一方で、保田圭と生徒役女性タレントたちが、芸能人として体を張って行くことの様々な苦悩に思いをはせている部分には、傍ら痛しと感じる部分とがありますが、ともあれ、過去のしくじり先生の中でも上位にあがる位、いい内容であったことは間違いない。
 要約は以下がわかりやすい。動画も次々にアップされてるハズ。

 概して番組として何がよかったかと言うと、保田圭が彼女の言葉で語っていたこと。もちろん、シナリオは放送作家が書いており、うまく挿入した五七五など、彼女が考えたオチではないはず。が、両者がよく理解しあった上でのストーリーに違いない。保田圭は、台本を読みながらも、リアリティを持って語っており、緊張と覚悟を持って臨んだ様が視聴者に伝わって、まさにしくじり先生にぴったりハマる

  それにしても、彼女自身の卑下っぷりといったら、酷過ぎる。しかし、これは国民的アイドルグループに加入した悲劇なのだ、と言わんばかりに。確かに、一般人であるならば、普通にかわいくて、歌もダンスもうまくて、才能あふれる女性なのだ。しかし、このアイドルグループの中では、ビジュアル的にスーパーかわいくないと存在意義が無い。悲しいかな、早い段階で、彼女は自分がかわいくないことに気づいてしまったという。モー娘。の全PVで彼女の映し出されている時間がたったの3分45秒という悲劇、撮影は他メンバーがハワイロケでも、自分は麻布十番、挙句トーク番組で「おまえはしゃべるな」とマネージャーから言われる。じゃあ、個性を極めようとするが、他のメンバーがそれぞれ強いキャラと役割を確立していて、自分の立ち位置がない彼女は阻害感の中で家で涙する、どん底な毎日だったのだ。

 が、やがて、空回りしてきたアイドルとしての自分を捨てて、笑いの”オチ要員”キャラとして開花していく。うたばんなどで石橋や仲居くんにイジられていたのは、記憶に新しいが、とことんイジられてスポットライトを浴びるのが快感になったという。陳腐な成功秘話のようかもしれないが、前段の下げ具合から急成長してドラマチックなものを生んでしまう。が、それだけではない、モー娘。卒業後、婚活がことごとく失敗し、彼女は再びどん底を味わう。波乱万丈(なのか?)。オチ要員として女性を捨てたことは、ソロになってからも男性に受け入れられない状態が続いたのだ。しかし、それでも折れることなく、最終的には素敵な白馬の王子様が現れることになったのだ。自分を一番好きになってくれる男性に出会えたのだ。
 過剰なまでに女性性を捨てたがために合コンで失敗しながらも、結婚という究極目標に飽くなき立ち向かうところは、女性性が成せる技だ。なんとも両立しがたい行動でありながら、最後まで女というレールからは外れないんだな。しかし、これは必然で、女を捨てたアイドル人生から一転、結婚で女性性の承認を得たいと思うのは、彼女にとって重要な意味を持つ。
 いや、冷静に考えれば、保田さんにだって、普通に素敵な殿方は現れる予定だったでしょうに。しかし、いつも人生とはドラマ仕立てなのだ。

 ジェンダーワイズ的には何とも論評しがたい。全体的には、自分を「ブスキャラ」とまで言ってしまう自己分析に優れた元アイドルの自虐伝説で、ストーリー語りが過剰に自分の女性性を蔑んだがために自作自演な演出のようにも感じる。昨今は、自分の弱みをいかに暴露するかが強みでもあり、自分イジりというのが視聴者の共感を呼ぶようにも思う。しかし、今回の彼女の名言「どんなところにいても絶対に自分しかできないポジションはある」は、男女問わずして多いに勇気づけられたことは間違いない。この人生の教訓は、彼女が女性性を常に問われ、劣等感と闘ってきた上で成り立っているから、なおさら女性陣の涙を生んだ。
 しかししかし、保田圭の女の勝負はこれから。人生の究極目標は結婚ではなかったことに彼女はやがて気づき、大いなる自己実現に向かってさらなる飛躍にチャレンジしていくだろう。さあ第三章のスタート、どんな人生が待っているのでしょうか。