ジェンダーワイズ

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女叩き女への秀逸な考察

 あまり宣伝したくはないが、最近、おだしプロジェクトと言って少々有名になりつつある料理研究家(?)の土岐山協子氏の炎上状態について、秀逸な考察を見つけた。

 まず炎上するもととなった、記事「すげえ腹立つわ」はここ

 就学前の子どもがいる母親がイベントを開催したり、あまつさえ子どもを連れてイベントの為に家をあけて旦那さんを一人にするなど言語道断だと思います

 鼻息の荒さが半端ない。これに対し、反論のメールが殺到炎上したらしく、2ちゃんでの批判も続いている。妻の自己実現、何が悪い?。夫が留守番してくれるのだから。一体何者?
 そんな土岐山氏自身は夜は飲み屋で酒を飲み、化調まみれの餃子とラーメンも大好き、でも子持ち主婦には出汁を引いて、謙虚でしなやかでいろ、と思い切り上から目線。

 ただし何よりも、同性に対する土岐山氏の容赦ない口の悪さに目がいってしまっており、もうちょっとクールに考察しようというのが、柴田英里氏(現代美術作家、文筆家)によるコラムがこちら

 つまり主張としては、①夫婦ともに働くことは、夫からの収入が途絶えたときのリスクに備えること、②親は子供のために存在する人だけの人でなく一人の人間である。③女性・母親だけ断罪するのはおかしい、のであり、土岐山氏の言葉選びが汚いがために、いとも簡単に非難され、”女による女叩き叩き”の不毛感、内ゲバ感がある、としたうえで、

「愛情料理研究家」という肩書きを持つ人のミソジニー女性嫌悪)記事が炎上するのは確かに理にかなっているのですが、これを、「愛情料理研究論」としてではなく、「銀座クラブのママ」が、保守的でミソジニーの強いおじさん客に対するウケを狙ったセールストークと考えてみればしっくりきます。

 そう、この人は女性ではなくてオッサンだよな、とずっと私は腑に落ちない気持ちでいたが、ようやくモヤモヤした感覚が言語化されたのだ。”保守的で女性を蔑むおじさんに同調し迎合する、ホステスそのもの”。銀座のママと地域を特定するのは語弊はあるが、土岐山氏の特異な職歴から来た実に上手いまとめ方。

 本来的には、女性が、女性に対する現状を理解し、サポートする姿勢を見せれば、物書きとして大きな共感を呼ぶのでしょうが、最初から敵対していて、どうも自分のことを同じ”女性”とは思っていない口ぶり。
 おじさんを喜ばすセールストーク=「女は男と子供のために存在するのよ」で、土岐山氏はせっせと布教活動をしている。なら、なんで土岐山氏は母にならない?

 私が思うに、この人は、コンサバおじさん以上に物凄く強いミソジニーを持っているに違いない。なら、名誉男性になって、母親たちに出汁作りを説いていきたい。男性と名誉男性の前では、母は謙虚でしなやかに従えたまえと。

 日本人に本当の出汁の美味しさを知ってもらうためには、単に主婦相手ではなく、食のマーケット全体にかかわる事として、啓もうする相手や場所は、たとえば、老若男女、外食産業、料理メディア、学校給食等多岐にわたるはずである。なのに、ターゲットは主婦限定であり、おだしプロジェクトとしての浅さを禁じ得ない。

 ご本人もおっしゃる通り、子供のころに、母親から期待する愛情を受けられなかった辛い経験があった。もっと子を構ってあげなさい、と。そして、推測だが、成長し大人になってからも、子供をもつ専業主婦に対し、鬱屈したものを抱き続けることになる何かが起こり、旦那を構ってあげなさい、旦那一人留守番させるな、と。つまり、母という女性に抑圧され続けた歴史によるルサンチマンミソジニーかもしれない。

 しかも、主婦相手なら、自分の狭い自分の引き出し(=料理のバックグラウンド無し)でも、太刀打ちできると思ったのかもしれない。主婦はそんなに舐めたものではないのだが、大したタマである。